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きものがブームといわれる陰で

インターネットが普及し、ブログを書くことも当たり前になりました。

きものファンの方はもちろん呉服店の方もブログを書かれていて、それぞれきものに対する考えを述べられていたりします。

気になったのはあるきもの屋さんの書かれた記事です。
今のきものユーザーに好まれるポップでモダンな着物や小物が作られるようになり、「きものファンが普段に楽しめる、着たいものを着られるいい時代」だと書かれていました。

そう思われているきものファンの方もいらっしゃるかもしれませんが、私はそうは思いません。

確かに私が20歳前後の頃は若向きの帯などほとんどありませんでした。
きものだってピンクしかありません。
一部のブランドに黒やえんじがあるくらいだったのではないでしょうか。
今はその頃では考えられないくらい、斬新な若い方向けのきものや帯が作られています。

一方で品質のほうは下降の一途をたどっているように思います。
刺繍は立体感のない糸すらケチったもので、色の使い方・柄の表現も海外の感覚で日本的なものとはかけ離れていたりします。
帯揚げも触った瞬間に「?」と思ったほど生地質が・・・・・なものに遭遇したりします。

品質に限らずデザインも疑問です。
普段に気軽に・自由に着たいという方は多いと思いますが、果たして"普段に着られる着物"とはイコール柄×柄×柄の斬新なコーディネートをいうのでしょうか。
洋服やファブリックと変わらない深みも広がりもない単純な色あいなのでしょうか。

もっと普通に純粋にきものが好きで、人と違った変わった格好をしたいわけではなく、きものならではの美しさを損なわずに普段に気軽に着物を着たい、そう思われている方のための着物や帯はまだまだ少ないように思います。

倒産品がインターネットオークションで流れたり問屋の直販で価格破壊も進んでいます。
いいものが安く手に入るのは誰でも嬉しいことですが、その一方で小売店や生産者が倒れていっているのも事実です。

100円ショップができてからの文房具屋さん、量販店が価格競争にしのぎを削るようになってからの街の電気屋さん、大型店の安売りに押される酒屋さん。
同様の状態がきものの世界でも起こっています。

きものに限らず少しでも安く消費者に商品を提供したい、それが業界全体の発展につながるという考えは商売人として立派です。
しかし「安売りで自分のところだけ儲かればいい」という業者も混じっています。

ある業者さんがマニアックな商品を製造元から買い占めました。
その商品を作っているところは日本でも本当に数軒しかありません。
数年分を買い占めてインターネットで定価の半値で売り始めました。
マニアックな商品ですから一気になくなることはありません。
インターネットで検索すれば価格が比べられますから、他の業者で販売しても売れなくなっていきます。
結果、その商品を作っているところはつぶれてしまいました。
買い占めてもらったところも他の業者さんが買ってくれなくなったので、同様につぶれてしまいました。

こういうことは珍しいことではないのです。
むしろ今以上にインターネット人口が増えたら(パソコンに馴染みのない世代が減っていくわけですから)、もっとこうした例が出てくるはずです。

私は何にしろ安ければ良心的、とういうわけではないと思っています。
食品なら安すぎるのは安全性が心配です。
美容院や宿泊代など、手元に物が残らないサービスも料金と質はやはり連動します。
宣伝のために期間や受付数を区切って同じ内容でも安いという場合もあると思いますが、多くはそれに見合ったコストカットやダウングレードはしているはずです。

きものは価格が不透明といわれ、高額品が多かったので安くなった=いい時代になった、良心的なところだと思いがちです。

きものファンが増えたから、というだけでいろいろなものが安く作られるようになったわけではありません。
海外生産にどんどんシフトしていっていることも大きいのです。
人件費が安くすむので海外で作るようになりました、
きもの人口が減った長くつらい時代の後に仕事を海外に持っていかれたり、値下げするより他なかったり・・そして国内の製造者が減ってしまい、どうせノウハウのないところで作ってもらうのなら海外で作っても同じ、という流れが出来上がっています。

このまま低価格とデザインの斬新さだけが追求されるようになったら、生産者やかたくなに品質や美しさを追求する人たちはどうなってしまうのでしょう。

アンティーク着物にしても以前に比べたらかなり高くなっていてびっくりしてしまいます。
こんなブームになる前はもっと質もデザインもいいものが安く手に入りました。

きものがブームといわれていますがこんな側面があることも少し知ってほしいなと思います。

06年10月19日

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