快適きもの生活(仮)2枚目    
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くりまわし崇拝の落とし穴

洗い張りなどについていろいろ書きましたが、今回いちばん書きたいのは「くりまわし」についてです。
左右の身頃を入れ替えたり、お母さんのきものを子供用に仕立て直したり、きものから羽織になったり帯になったり、よそいきが普段着になり、室内着になり、寝巻きになり、ぞうきんになり・・・・
というのがくりまわし。

きものならではの利便性だとかものを大事にする美しい文化だとか、ニワカ崇拝者が増えているように思います。

またアンティーク着物のお店をのぞきに行くと、「仕立て直せば裄ももうちょっと出せますよ〜〜」を連発されます。

"洗い張り"は魔法ではありません。
何十年前に仕立てたきものの針目がきれいに消える魔法でも、古いシミが取れる魔法ではないのです。


お母さんのきものを着たい、アンティークのきものを着たいから仕立て直したいとなると、ほとんどの場合大きく仕立て直すことになると思います。

きものは日光や照明で色が変わってしまうことがありますが、そうなると表に出ていなかった部分、縫い代に入っていた部分の色とは違ってしまうことになります。
これを元の寸法より大きく仕立て直すと・・・・・色補正が必要になってしまいますね。

仕立て直しは針目が残ることもあり、針目を境に色が変わっていたりすると余計目立つことになります。
ツルツルした生地、平織りの生地は針目が残りやすく、古いものでなくても注意が必要です。
仕立て屋さんでは「正直、大島紬などは仕立てた直後でも裄を伸ばしたりとかは勘弁してほしい。」ということでした。

和裁用のミシンなどが作られ、ミシン仕立ても増えていますが、縫う時の力を調整できるという点では手縫いにはかないません。
ミシンと一口にいってもいろいろあるようですから、必ずしも仕立て直しに向かないということはないとは思いますが。

私の知人が洗い張りをしてくれるところを探して行ってみたところ、
「最近はアンティークのきものを持ってくる人が多いんだけど、いざ洗ったりすると裂けたりするものもあってね。そのことを理解していただいてからでないと、お受けできないですよ」
と教えてくださったそうです。

これだけブームになってもそのあたりのことが説明されることがないのはどうしてなのでしょう。

そのあたりのことを気にしない、気にならないという方がすべてではなく、新しくきものに目覚める方の中には、そういうリスクを知らずにいる方もいらっしゃるはずです。

くりまわしといっても訪問着や付け下げの身頃を取り替えたり、上下を逆にすることはできません。
紋をいれてしまうと色無地でもなんでもできるわけではありません。
江戸小紋も無地と同様にはいきません。
柄にもよりますが、生地の向きを変えたり、袖と身頃の柄の合わせた方で濃淡が違って見えることもあります。
縫い代にも気を遣うほどのきもの、それが江戸小紋なのです。

「昔は洗い張りとかも家でやっていたのよね」とよくいわれますが、やはり普段のきものが多かったのでは、と思います。
たしか「伊勢物語」だったと思いますが、没落したお姫様が自分で洗い張りをして、うまくいかずに裂いてしまった。
泣いている姿を見た高貴な男性が上等なきものを届ける・・・・というお話がありました。

もっと時代が下ってからは、袷から単衣の時期に変わる、でもきものはあまり持っていない。
日中袷として着ていたものをほどいて、夜のうちに単衣に縫い直す。
そして翌朝から単衣のきものとして着て・・・・・というお話もありました。

季節ごとの衣類を質屋に預けて・・・・というのとは違い、微笑ましくも尊敬に値するお話です。

05年11月06日

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